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8月17日のツイート

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Cass R. Sunstein著「How to Interpret the Constitution」 books.macska.org/cass-r-sunstei… いつのまにかバイデン政権で国土安全保障省の上級顧問に就任していた(ちなみにパートナーのサマンサ・パワー国際開発長官のオマケで政権入りしたとの噂)キャス・サンスティーンせんせーの新著。… pic.twitter.com/S57hxpA6Cs

posted at 17:59:52

…サンスティーンお得意の、テーマをアイディア1つに絞った短い本(たとえばこれ books.macska.org/cass-r-sunstei… )だけど、「憲法をどう解釈するか」という本書の主題は著者の専門のど真ん中なだけあってしっかりした内容。ここのところアメリカでは、保守派の最高裁判事たちによって妊娠中絶や…

posted at 17:59:53

…アファーマティヴ・アクションをめぐり長年続いた判例を覆す判決がいくつもくだされているが、保守派判事らがその根拠として挙げるのはオリジナリズム(原典主義)と呼ばれる憲法解釈理論、すなわち憲法の条文はそれが書かれた当時の解釈を維持すべきだという考え方。たとえば2022年のDobbs判決が…

posted at 17:59:53

…過去の判例を覆すまで、妊娠中絶の権利は憲法のさまざまな条文から導き出されるプライバシー権の一貫として擁護されてきたが、憲法にはプライバシー権などという権利は書かれていないし、憲法が制定された当時その条文が妊娠中絶の権利を保証すると解釈していた人はいなかった。從ってそのような…

posted at 17:59:53

…憲法上の権利は認められない、というのがオリジナリズムの立場になる。しかしもちろんオリジナリズムは憲法解釈の唯一絶対の理論ではないし、オリジナリズムにも当時の解釈をどのレベルで(文面か、策定者の意図か、当時の一般的な理解か、など)維持すべきかによっていくつか種類があり、決して…

posted at 17:59:53

…一義的に解釈を決めることはできない。憲法には日常起こるあらゆる問題について書かれているわけではないし、そもそも憲法が書かれた当時と現在では社会のあり方が大きく変化していて、当時存在しなかった物事や概念もたくさんある(たとえば言論の自由を保証した条文はインターネットにも…

posted at 17:59:54

…適用されるのか、など)。憲法の条文を尊重するといっても、多くの場合どのように解釈すれば尊重したことになるのか自明ではない。当時の意図や解釈をそのまま受け入れるのか、それとも条文に表された理想や原理原則(平等、自由など)を現代社会に当てはめて解釈すべきなのか、というのは大きな…

posted at 17:59:54

…分岐点になる。オリジナリズム以外の憲法解釈の理論としては、判断が難しい場合は伝統や慣例に従うべきだという伝統主義の考え方や、誰が見ても明らかに違憲でないのであれば原則的に裁判所は議会や行政の政治的な決定を尊重すべきだという考え方、より矛盾が起きず社会が安定する解釈を…

posted at 17:59:54

…取るべきだという考え方、より自由で民主的な方向に推し進めるような解釈をすべきだという考え方などがある。こうした理論のうちどれかの理論が正しく他が間違いであるというわけではなく政治的な選択であり、もしどれか特定の解釈の理論を主張するのであれば、それが理念上ではなく現実の…

posted at 17:59:55

…アメリカ社会においてより良い憲法的な秩序をもたらすことを訴えるべきだ、と著者は主張する。たとえば、法の下の平等を定めた憲法修正14条が制定されたとき、妊娠中絶の権利や同性婚の権利はもちろん、人種隔離政策や女性に参政権やその他の権利を認めないことが法の下の平等に反するという認識は…

posted at 17:59:55

…共有されていなかった。オリジナリズムの理論に従うとそれらの権利は憲法が認めたものではないので、一部の州が同性婚や女性参政権を廃止したり人種隔離政策を復活させたとしても憲法違反にはならない、ということになる(が、オリジナリズムを主張する保守派判事らは同性婚や中絶の権利については…

posted at 17:59:55

…このとおり主張するが、女性参政権や人種隔離政策については誤魔化しがち)。このような理論が導き出す憲法的秩序は望ましくないものであり、だから現代アメリカにおいてオリジナリズムは否定されるべきだ、と著者は言う。もしアメリカの憲法がより平等で民主的な時代に制定された…

posted at 17:59:55

…ものだったのであればオリジナリズムは好ましい憲法的秩序をもたらしたかもしれないし、もしアメリカが伝統的により平等で民主的な歴史をたどっていれば伝統主義的な解釈が有効だったかもしれない。もしアメリカの政治が人種や階級、セクシュアリティなどによってここまで分断されていなければ、…

posted at 17:59:56

…よほどのことでない限り裁判所がいちいち議会や行政の政治的判断を吟味せず尊重する制度でも良かっただろう。しかし現実問題として、アメリカでは歴史を通して裁判所がさまざまな過ちをおかしつつも、より自由で平等で民主的な憲法秩序をもたらすために大きな役割を果たしてきたことは否定できない。

posted at 17:59:56

…わたしたちがどのような憲法解釈の理論を選択すべきかは、理念や信条としてではなくこうした歴史的経緯をもとに判断すべきだ。わたしたちはどのような理論に基づいて憲法解釈をするのか選択しなくてはいけないと著者は主張するが、実際の判例を見ていると最高裁全体、あるいは個々の判事がなにか…

posted at 17:59:56

…特定の憲法解釈の理論を一貫して適用しているわけではない。本書だけでなくオリジナリズム批判の書「Worse Than Nothing: The Dangerous Fallacy of Originalism」 books.macska.org/erwin-chemerin… (Erwin Chemerinsky著)にも書かれていているように、アファーマティヴ・アクションをめぐる最高裁の…

posted at 17:59:57

…審理においてはリベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事がオリジナリズム(憲法修正14条は奴隷制から解放された黒人たちの権利を守るためのアファーマティヴ・アクションと同時に制定されたのであり、アファーマティヴ・アクションを否定する意図があったとは考えられない)を援用し、…

posted at 17:59:57

…保守派の判事たちがオリジナリズムを無視した判断をしている。Chemerinskyはオリジナリズムを標榜する保守派判事たちが実際には一貫した憲法解釈の理論に基づいて個々の事例を判断しているのではなく、保守懐古主義に都合のいい理論としてオリジナリズムを使いまわしつつ都合が悪くなるとあっさり…

posted at 17:59:57

…放り捨てて行き当たりばったりに別の解釈を採用していることを指摘しているが、著者は保守派判事たちの「オリジナリズム信奉者」という自称をそのまま受け入れたうえで、憲法解釈の理論の違いとして扱っている。まあそのあたりの中道っぽいポーズがサンスティーンせんせークオリティなわけだけど。

posted at 17:59:57

Jennifer McAdam著「Devil’s Coin: My Battle to Take Down the Notorious OneCoin Cryptoqueen」 books.macska.org/jennifer-mcada… OneCoinという実際には存在しない暗号通貨をマルチ商法を通して世界中で販売した「暗号女王」ことRuja Ignatovaを追い詰めたチームの一員として積極的に発言してきた… pic.twitter.com/e41WUVXF2V

posted at 19:14:43

…著者による本。チームのほかの人たちが暗号通貨の専門家やジャーナリストなどの専門職であったのに対し、著者はOneCoinに早い段階で投資した被害者の一人で、ほかの人を勧誘してしまったという意味ではそういうつもりもないまま加害者にもなってしまったスコットランド人の女性。…

posted at 19:14:43

…OneCoinとIgnatovaについてはBBCが2019年に製作したポッドキャストシリーズ www.bbc.co.uk/sounds/brand/p… とそれを元にした(Ignatovaの行方について新たな情報も書かれている)Jamie Bartlett著「The Missing Cryptoqueen」 books.macska.org/jamie-bartlett… に詳しいけれども、…

posted at 19:14:43

…本書はそうした俯瞰からではなく、ドメスティック・バイオレンスや持病による長期的な障害を経験し経済的な安定を求めた著者がIgnatovaが与えた夢を信じ、父親が生涯をかけて貯めた遺産を騙し取られ、そしてそれに気づき、お金が戻ってこないであろうことを理解しつつも、さらなる被害を食い止め…

posted at 19:14:44

…詐欺犯らに責任を取らせようと闘った、一人の個人の経験が綴られており、すでに「The Missing Cryptoqueen」を読んでいてストーリーを概ね知っていた(著者はBBCポッドキャストにも協力している)わたしでも十分興味深く読めた。著者はファッションをバッチリ決めたカリスマ性のある…

posted at 19:14:44

…Ignatovaに魅了され、ビットコインの急騰には乗り遅れたけれどもOneCoinに投資すればいずれはビットコインより大きくなる、と信用し、約280万円の父の遺産を投じてしまう。冷蔵庫が故障するなど生活費が必要となり、OneCoinを現金に変えて引き出そうとするも、そのたびに「これから価値がどんどん…

posted at 19:14:44

…上がるのにいま引き出すなんて馬鹿げている」と説得され、実際には引き出せないことに気づくのが遅れてしまった。OneCoinはビットコインと同じような暗号通貨だという触れ込みだったけれども、実際のところ暗号通貨に不可欠なブロックチェーンは存在せず、OneCoinのサイト上に表示される…

posted at 19:14:45

…(どんどん増えていく)残高にはなんの根拠もなかった。ビットコインなどではブロックチェーンがあるおかげで誰か特定の人が管理せずとも誰にも改竄できない信用できる支払いの記録を蓄積することができるとされているが、OneCoinはブロックチェーンを公開せず同社が管理する中央集権型の…

posted at 19:14:45

…暗号通貨というよくわからない存在だったため、暗号通貨の専門家らから疑問視された。著者はそうした専門家らとネットで激論を交わすも、そのことがのちにOneCoinへの疑いを抱くきっかけになる。てゆーかOneCoinの中の人がどうせ彼女には分からないだろうと「ブロックチェーンは…

posted at 19:14:45

…社内のSQLサーバにちゃんと記録されているから安心しろ」と彼女に説明したことが、「いやSQLサーバにブロックチェーンは入らんでしょ、てゆーかSQLサーバに入っているってことは、それってなんの根拠もないただのデータベース上の数字じゃね?」と著者に気づかせる要因になったらしい。…

posted at 19:14:45

…OneCoinが詐欺だと確信したあとの著者は、OneCoin支持者らのフェイスブックグループで発言したり、ウェビナーを開催するなど、積極的に発言していった。彼女が設置したOneCoin被害者のグループには多数の人が参加し(Ignatova本人もスパイのために入ってきていたらしい)、国や言語ごとに多数の…

posted at 19:14:46

…グループが傘下に生まれた。著者は連日、Ignatovaの背後にいるとされるブルガリアやロシアのマフィア関係者と思われる人たちの脅迫に怯えながら、機械翻訳を頼りに世界100以上の国の被害者たちと連絡を取り合い、全財産を失い自殺を考えている人たちを支えた。本書にはそうした他国の被害者たちの…

posted at 19:14:46

…生の声もたくさん掲載されており、OneCoinが著者のような先進国の人たちだけでなく、アフリカやアジアの貧しい街で牧師や地元の権力者らを手下に加え、銀行口座を持たず起業する機会にもめぐまれない多くの人たちを食い物にしてきたことが分かる。…

posted at 19:14:46

…財産を失った人が自殺したり不幸のどん底に落とし込まれただけでなく、地域社会を崩壊させOneCoinに騙され資産を失った犯罪組織が勧誘してきた人たちを見せしめに処刑する事件なども起きるなか、一人の被害者である著者がこれだけ活発に活動し、…

posted at 19:14:46

…被害を表沙汰にしたくない人たちの声をメディアや捜査当局に届けたの、本当にすごい。「The Missing Cryptoqueen」とともに是非。

posted at 19:14:47


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